低栄養について

低栄養を、地域で早く見つける

「年のせい」で終わらせない。
低栄養は、気づくことから変えられます。

低栄養は、必要なエネルギーやたんぱく質などが不足し、体重・筋肉・身体機能が低下していく状態です。一般にイメージされる「栄養失調」とは異なり、やせている人だけでなく、太って見える人や元気に生活している人にも起こりえます。病気や薬、口腔、暮らしの変化まで丁寧に捉え、早期に対応することが大切です。

NUMBERS / EARLY ACTION

65歳から、低栄養に早く気づく習慣を

低栄養への対応は、状態が進んでから始めるものではありません。65歳を過ぎたら、定期的に栄養状態を確認し、気づきから意識変容、行動変容へつなげることが大切です。

19.5%65歳以上でBMI 20以下
(令和6年国民健康・栄養調査)
65歳からMNA-SFは65歳以上を対象に
開発・検証されたスクリーニングです
早く気づく確認する → 意識が変わる →
食事・受診・生活の行動が変わる
65歳から始める、低栄養の早期チェック約5人に1人に低栄養傾向

全国の高齢者を一律に診断した人数ではなく、BMIによる低栄養傾向の指標です。

※BMI 20以下は「低栄養傾向」を捉えるための公的な指標の一つであり、低栄養そのものの診断ではありません。実際の割合は、住まい・疾患・介護の状況や用いる評価法によって異なります。

WHAT IS MALNUTRITION?

低栄養は、やせている人だけの問題ではありません

低栄養は、食べるものが全くない状態を指すだけの「栄養失調」とは異なります。太って見える人、元気に見える人でも、筋肉量の減少や食事量の低下、病気・炎症の影響によって低栄養が隠れていることがあります。

01

からだをつくる力が不足する

エネルギーやたんぱく質、必要な栄養素が不足すると、体重だけでなく筋肉量や回復する力にも影響します。

02

見た目だけでは分からない

体格が大きい方や活動的に見える方でも、筋肉が減っていたり、必要な栄養が足りていなかったりする場合があります。

03

病気のサインであることも

食欲低下、体重減少や炎症の背景には、治療や病気、薬の影響など、確認が必要な原因が隠れていることがあります。

WHY IT MATTERS

放置すると、生活の選択肢が少しずつ狭くなることがあります

食事量・体重の変化
筋肉量・筋力の低下
フレイル・サルコペニア
転倒・感染・回復の遅れ
入院・要介護化のリスク
早期の気づき・原因確認・個別支援で、流れを変えられる食べる量・体重筋肉・体力フレイル転倒・感染等入院・要介護

低栄養への対応は、機能低下が進む前から始めることが重要です。

これは必ず進む一本道ではありません。だからこそ、早い段階での気づきと、原因に合わせた支援が重要です。

CAUSES & SIGNS

原因はひとつではありません

食べる量・食べる力

食欲低下、食事制限、噛みにくさ・飲み込みにくさ、消化吸収の問題など。

病気・治療・薬の影響

急性・慢性疾患、炎症、手術後の需要増加、服薬による食欲や味覚への影響など。

暮らし・こころ・社会とのつながり

独居や孤食、買い物・調理の負担、経済的な事情、抑うつ、外出・活動の低下など。

CHECK

まず、日常の小さな変化を見逃さない

□ 以前より食べる量が減った・食べにくくなった
□ 体重が意図せず減っている/服がゆるくなった
□ 疲れやすい・歩く速度が遅くなった・外出が減った
□ むせる、口が乾く、歯や入れ歯が合わない
□ 病気や薬が増え、食欲・便通・味覚が変わった
□ 退院後、食事や体重を継続して見てもらう場がない

気になる変化がある場合は、自己判断で終わらせず、かかりつけ医・歯科医・管理栄養士・薬剤師などへ相談してください。

SCREENING & DIAGNOSIS

見つけることと、診断することは違います

低栄養対策は、まず短時間の栄養スクリーニングでリスクに気づき、必要な方を詳しい評価へつなぐことから始まります。MNA-SFなどの検証されたツールは、病院だけでなく薬局や高齢者施設、地域の場でも活用できます。

1|スクリーニング

食事量、体重減少、活動性、心身の状態などを確認し、低栄養リスクを見つけます。

→

2|GLIM基準を用いた評価・診断

医療機関等で、表現型基準と病因基準を組み合わせ、低栄養の有無・重症度・原因を評価します。

表現型基準(いずれか)

  • 非自発的な体重減少
  • 低BMI
  • 筋肉量の減少
+

病因基準(いずれか)

  • 食事摂取量の低下・吸収不良
  • 疾患負荷・炎症

GLIMは国際的な成人低栄養の診断枠組みです。診断は医師・管理栄養士等を含む適切な専門職が、個別の状態に応じて行います。

WHY GLIM / ICD-11

低栄養を「見逃さない」から、
「診断し、支える」へ

かつて成人の低栄養は、国や施設、専門職によって評価のものさしが異なり、同じ状態を共通の言葉で捉えにくい課題がありました。そこで生まれたのが、世界の臨床栄養学会が合意したGLIM基準です。

BEFORE GLIM

基準がそろわない

BMIや体重減少など、何を重視するかが現場ごとに異なり、低栄養の比較・研究・連携が進めにくい状況がありました。

2018–2019

GLIM基準が国際合意

体重減少・低BMI・筋肉量減少という「表現型」と、摂取低下・吸収不良、疾患負荷・炎症という「病因」を組み合わせて評価する共通枠組みが示されました。

ICD-11

成人低栄養を疾病分類に整理

WHOのICD-11では、成人の低栄養が「Undernutrition in adults(5B72)」として整理されています。GLIMは診断枠組み、ICD-11は疾病分類であり、役割は異なります。

これは、低栄養を「食べていないだけ」としないための重要な転換です

GLIMの国際合意は、低栄養を摂取不足だけでなく、筋肉量の減少、疾患や炎症の影響も含めて捉える科学的な基盤になりました。成人低栄養が国際疾病分類で整理されたことも、見た目や年齢だけで片づけず、適切に評価し支援する必要性が国際的に共有されてきたことを示す動きの一つです。

CARE THAT PROTECTS DAILY LIFE

超高齢社会で、栄養ケアは
「生きる力」を支える基盤です

疾患の治療は大切です。一方で、高齢になり複数の疾患と付き合いながら暮らす時代には、食べる力、動く力、日常生活動作(ADL)、自分らしい生活の質(QOL)を守ることが同じくらい重要です。低栄養への介入は、その土台になります。

医療では、GLIMによる評価が明記

2024年度の診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟入院料1で入退院時の栄養状態評価にGLIM基準を用いることが要件となりました。栄養評価は、治療後に残す生活機能や回復の質を考える医療の重要な一部です。

介護でも、栄養ケアの実施が求められる

介護保険施設では、栄養ケア・マネジメントを実施しない場合に減算となる仕組みが設けられています。食事は単なるサービスではなく、自立支援・重度化防止・その人らしい暮らしを支えるケアです。

制度上の対象施設・算定要件には条件があります。ここで示すのは、低栄養と栄養ケアが医療・介護の質を支える重要な課題として位置づけられていることです。

LOW NUTRITION CONNECTS THE COMMUNITY

低栄養は、地域をつなぐ
多職種・異業種の共通言語です

薬局が健康サポート・健康増進の一環として低栄養に早く気づき、必要な人をつなぐことは、これからの地域に必要な役割です。低栄養は、病気の有無だけではなく、食事、口腔、運動、暮らし、社会参加まで関わるため、医療・介護・地域の関係者が同じ課題を共有し、連携を始める入口になります。

COMMON LANGUAGE低栄養を防ぎ、「食べる・動く・暮らす」を守る
薬局気づき・継続支援
医療診断・治療との連携
介護日々の観察・ケア
自治体予防の仕組みづくり
食品企業食べやすい商品・食環境
研究機関根拠づくり・検証
レストラン・商店街食の楽しみ・地域参加
ジム・運動の場筋力・活動を支える

専門職だけで完結させず、日常にある「食べる場所」「動く場所」「相談できる場所」をつなぐ。薬局はその地域連携のハブになれます。

FROM FINDING TO ACTION

解決は「栄養を足す」だけではありません

STEP 1

変化を記録する

体重、食事量、口腔・嚥下、活動性、薬の変化を継続して確認します。

STEP 2

原因を確かめる

疾患、炎症、薬、口腔、生活環境などを多角的に評価します。

STEP 3

個別に介入する

食事、栄養補助、運動、口腔ケア、服薬・治療の見直しなどを組み合わせます。

STEP 4

地域で続ける

退院後・在宅でも、医療機関、薬局、施設、配食、家族が連携して見守ります。

必要なのは、誰か一人の努力に任せることではなく、気づく場所と、つなぐ先を地域に増やすことです。

低栄養を、もっと身近に学ぶ

高齢者の低栄養を知る100の話

「最近やせた気がする」「退院後の食事はどうする?」「薬と食欲は関係ある?」。日々の疑問から、低栄養を防ぐヒントをわかりやすくお届けします。

一般社団法人 在宅栄養ケア推進基金のホームページで公開しています(外部サイトへ移動します)。

在宅栄養ケア推進基金の「100の話」を読む →
OUR APPROACH

研究を、現場で使える仕組みに変える。

栄養ケアプランニングは、低栄養を「地域で見つけ、原因を捉え、継続的に支える」ために、医療・福祉・食・農を横断して実装に取り組んでいます。

  • 検証済みのMNA-SFを搭載し、GLIM基準に対応した栄養ケア支援システム
  • 薬局、医療機関、高齢者施設、自治体、配食・食品事業者とつながる地域実装
  • フレイル・サルコペニア、口腔・嚥下、食事・食品、行動変容を含む多面的なデータ・実践の蓄積
  • 大学・研究機関と、研究設計から現場導入、評価、社会実装までを共創する体制
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低栄養を知ることが、最初の予防になります

高齢者の低栄養を、身近な疑問から学べる連載も公開しています。

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