低栄養予防に関するブログ | 薬局経営
処方箋枚数の変化を整理し、
患者対応と地域との接点を見直す。
「昨年より処方箋枚数が減っている」「門前の医療機関の患者数が減り、この先が心配」「新しい取り組みをしたいが、現場に余裕がない」。薬局経営を見直そうとしても、何から手を付けるべきか迷うことがあります。
処方箋枚数の減少に対して、イベントや物販をすぐに増やすことが適切とは限りません。まず減少の理由を分け、そのうえで、既存患者への対応や地域との関係を見直すことが出発点になります。
この記事では、薬局経営者・薬局長に向けて、見直したい5つのことを整理します。その中で、食事や体調の変化について相談できる薬局づくりと、地域で継続的に患者を支える方法も紹介します。
1.処方箋枚数が減った原因を分ける
最初に確認したいのは、「患者数が減ったのか」「同じ患者の来局回数が変わったのか」という違いです。処方日数や受診間隔の変化によって、患者数に大きな変化がなくても、月ごとの処方箋枚数が変わることがあります。
一方で、門前医療機関の診療体制の変更や、競合薬局の出店、待ち時間への不満などでは、検討する対策が異なります。少なくとも前年同月や直近数か月を比較し、次の項目を整理してみましょう。
- 患者の動き:実患者数、新規患者数、継続利用の状況はどう変わったか。
- 来局の間隔:処方日数や受診間隔に変化がないか。
- 医療機関ごとの変化:特定の医療機関からの処方箋が減っているのか、全体的に減っているのか。
- 店舗の状況:待ち時間、欠品、営業時間、相談対応などに利用しづらい点がないか。
集計では、実患者数と処方箋枚数を混同せず、同じ条件で比較することが大切です。また、枚数だけでなく、収益や業務量、人件費なども併せて確認します。枚数の減少だけで経営状態のすべてを判断しないようにしましょう。
たとえば、門前医療機関の診療日が減った場合と、患者が待ち時間を理由に別の薬局へ移った場合とでは、優先すべき対応が違います。原因を整理してから、取り組みを選ぶことが重要です。
2.既存患者が利用しづらい点を見直す
新しい来局者との接点を増やす前に、いま利用している患者が困っていないかを確認します。丁寧に服薬指導をしていても、薬を受け取るまでの見通しや、相談方法が伝わっていなければ、不便さが残ることがあります。
「混み合う時間帯がわからない」「薬がそろわないときの説明が十分でない」「後から気になったことを、どこに聞けばよいかわからない」。こうした点は、日々の対応の中で見つけられる改善の入口です。
まずは患者から受けた質問や要望を短期間記録し、繰り返し出てくる内容をスタッフで共有してみてください。大きな設備投資を行う前に、説明の仕方や連絡方法の統一で改善できることがないかを検討します。
継続利用を考える際も、来局回数を増やすこと自体を目標にしないことが大切です。必要なときに安心して相談でき、適切な薬物療法や支援につながることが、患者にとっての価値になります。
3.処方箋の受け付け以外の地域接点をつくる
門前医療機関の患者数に事業が大きく左右されている場合は、地域住民に薬局の役割を知ってもらう機会を見直します。「どこにある薬局か」だけでなく、「何を相談できる薬局か」を伝えるためです。
厚生労働省の「患者のための薬局ビジョン」では、服薬情報の継続的な把握や医療機関との連携に加え、健康相談への対応も示されています。厚生労働省の資料を見る
地域との接点としては、店頭で相談内容をわかりやすく案内する、地域団体の集まりで薬や健康に関する話をする、自治体やJAなどの活動に協力する、といった方法が考えられます。
このとき、最初から大規模なイベントを開催する必要はありません。自店で対応できる相談内容、担当者、相談できる時間帯を決め、無理なく継続できる範囲から始めます。
健康相談を行うことが、直ちに処方箋枚数や売上の増加につながるわけではありません。まずは、薬局の機能を地域に知ってもらい、必要な人に相談先として認識してもらう取り組みとして考えましょう。
4.健康相談を一度きりで終わらせず、継続支援につなげる
相談の機会をつくっても、話を聞くだけで終わると、その後に必要な対応が見えなくなります。相談内容を記録し、次に何を確認するかを決めておくことが大切です。
たとえば、高齢の患者から「最近、食事の量が減った」と相談された場面を考えてみます。すぐに商品を勧めるのではなく、いつから変化したのか、体重や体調に変化がないか、食事の準備で困っていないかなど、状況を整理します。
食事に関する困りごとは、医師や管理栄養士への相談、服薬状況の確認、生活上の支援など、必要な対応が人によって異なります。薬局だけで判断・解決しようとせず、相談内容に応じた専門職へつなぐことが重要です。
こうした相談は、低栄養のリスクに気づく入口にもなります。ただし、簡易チェックだけで低栄養の診断を確定するものではありません。本人の状態や困りごとを確認し、必要な評価や医療・栄養支援へつなげるために活用します。
継続支援の記録では、相談内容、実施した対応、連携先、次回の確認事項が追えるようにします。システムを使う場合も、導入するだけでなく、誰が入力し、誰が結果を確認するのかまで決めておく必要があります。
5.地域の専門職と役割を分担する
健康相談を充実させようとして、薬局がすべてを抱えると、現場の負担が増えてしまいます。継続できる取り組みにするには、相談を受けた後の連携先と、情報共有の方法を決めることが欠かせません。
- 医療機関:診察や医学的な判断が必要な場合の相談先。
- 管理栄養士:食事・栄養に関する評価や具体的な支援の相談先。
- ケアマネジャー・地域包括支援センター:暮らしの困りごとや介護・地域支援につなぐ相談先。
- 配食などの食事支援事業者:本人の状況や必要な条件に合う食事を確保する際の連携先。
連携は、連絡先を知るだけでは十分ではありません。「どのような変化があったら相談するか」「相手に何を伝えるか」「その後の対応を誰が確認するか」を、連携先とすり合わせておきます。本人への説明や同意など、情報共有の手順も整えます。
大切なのは、薬局を利用してもらうために健康上の不安をあおることではありません。患者や住民の困りごとに対し、薬局ができることを行い、必要な支援へつなげることです。
まずは小さく始め、続けられるかを確かめる
5つの見直しを、一度に始める必要はありません。次のように段階を分けると、現場で検討しやすくなります。以下は導入手順の一例です。
- 現状を整理する:処方箋枚数、実患者数、来局間隔、店舗への意見を確認し、優先課題を1つ選ぶ。
- 小さな運用を決める:相談の対象、担当者、対応時間、記録方法、連携先を決める。
- 限られた範囲で試す:通常業務への影響と、相談後の対応が途切れていないかを確認する。
- 結果を見直す:継続する点と変更する点を整理し、必要に応じて対象を広げる。
確認する数字も、処方箋枚数だけに偏らないようにします。相談件数、必要な専門職につながった件数、継続確認の実施状況、スタッフの対応時間や費用などを組み合わせます。売上が変化した場合も、季節や門前医療機関の動きなどの影響と区別して考えることが必要です。
食事や体調の相談に対応できる薬局づくりを考える方へ
処方箋枚数の減少への対応は、減少原因の把握と、日々の業務の見直しから始まります。そのうえで、地域住民が困ったときに相談できる機能を育てることが、薬局の役割を伝える一つの方法になります。
栄養ケアプランニングでは、薬局における栄養ケアや、医療・介護などとの連携についてご案内しています。自店でどのように始めるかを検討される方は、サービス内容をご覧ください。
参考資料
- 厚生労働省「患者のための薬局ビジョン」
- 厚生労働省「薬局・薬剤師に関する情報」
本記事の運用例は、各薬局の体制や地域の状況に合わせて検討するための提案です。健康相談やシステム導入による処方箋枚数・収益の増加を保証するものではありません。