診療所の経営改善を考える際に欠かせない 「患者数の分析」「継続診療」「地域連携」。 院長・事務長が確認したい5つの対策を解説します。
「最近、外来患者が減ってきた」 「以前から通院していた高齢患者を見かけなくなった」 「新患は来るのに、再診患者が定着しない」。
診療所を経営する院長や事務長にとって、 外来患者数の変化は見過ごせない問題です。 患者数の減少が続けば、診療所の経営だけでなく、 地域で必要な医療を提供し続けることにも 影響しかねません。
一方で、患者数が減ったからといって、 広告を増やしたり、診療時間を延長したりすることが、 必ずしも最善の対策とは限りません。
まず必要なのは、 「なぜ減っているのか」を分析し、 自院が改善できる課題と、 地域全体で取り組むべき課題を分けること です。
この記事では、診療所・中小病院の院長、 事務長、外来部門の責任者に向けて、 外来患者の減少に対する5つの見直し方を紹介します。 後半では、近隣薬局との連携や、 高齢患者の健康状態を継続的に支える方法も考えます。
1.外来患者が減った原因を、まず数字で分けて考える
外来患者数が減ったとき、最初に確認したいのは、 新規患者と再診患者のどちらが減っているかです。
例えば、患者数が減少していても、 長期処方によって受診間隔が延びたケースと、 以前の患者が別の医療機関に移ったケースでは、 取るべき対策が異なります。
| 確認する項目 | 考えられる原因 | 検討したい対応 |
|---|---|---|
| 新規患者数 | 人口動態、認知度、競合、診療時間 | 診療圏と情報発信の見直し |
| 再診患者数 | 受診間隔、転院、通院困難、受診中断 | 適切な継続診療とフォロー |
| 年齢層別患者数 | 地域人口構成の変化、患者の高齢化 | 年齢層ごとの診療ニーズの把握 |
| 診療科・疾患別 | 疾病構造や地域の受療行動の変化 | 診療内容と地域ニーズの確認 |
| 曜日・時間帯別 | 受診しにくい時間帯、予約・待ち時間 | 予約や案内方法の改善 |
前年同月だけでなく、可能であれば過去数年を比較し、 季節性や感染症流行の影響も考慮します。 外来延べ患者数と実患者数、 診療単価も分けて把握しましょう。
ポイント: 患者数を増やす対策の前に、 「新患が減ったのか」 「既存患者の受診回数が変わったのか」 「継続が必要な診療が途切れているのか」 を確認することが重要です。
2.患者が安心して再診できる診療体制になっているか
患者が診療所を選ぶ際には、 医師の専門性や診療内容だけでなく、 受診のしやすさも大切です。
とりわけ高齢患者にとって、 長い待ち時間、予約方法の複雑さ、 移動の負担、説明のわかりにくさなどは、 継続受診を難しくする要因になり得ます。
見直したい4つの接点
- 予約・受付: 電話予約、オンライン予約、受付時の説明が、 患者にとって利用しやすいか。
- 診察・説明: 病状、薬、次回受診の目安が 患者や家族に伝わっているか。
- 診察後の支援: 検査や紹介、生活上の注意点について、 必要な支援先が案内されているか。
- 次回までの相談: 体調や生活状況が変化したとき、 どこへ連絡すればよいか明確になっているか。
これらの改善には、 必ずしも大規模な設備投資が必要なわけではありません。 予約方法の案内や、職員間の説明の統一など、 現在の運用を見直すことで改善できる部分もあります。
ただし、再診回数を増やすこと自体を 目的にするべきではありません。 患者の病状や必要な診療に応じて、 適切に継続受診できる環境を整えることが大切です。
3.高齢患者が通院しなくなる背景にも目を向ける
高齢患者が来院しなくなった場合、 必ずしも他院へ移ったとは限りません。
入院、施設入居、転居などのほか、 交通手段がなくなった、歩くことが難しくなった、 家族の送迎ができなくなったなど、 生活上の理由で通院が難しくなっている場合もあります。
また、長年診療を続けている患者でも、 病気の数値だけでは把握しにくい変化があります。
例えば、このような変化です
- 最近、体重が減ってきた。
- 以前より食事量が少なくなった。
- 歩く速度が遅くなり、外出を控えている。
- 疲れやすくなり、日常生活の活動量が減っている。
- 買い物や調理が負担になっている。
これらの変化は、疾患、薬の影響、 口腔機能や運動機能の低下、生活環境など、 さまざまな要因と関係します。
特に食事量や体重、筋力などの変化には、 低栄養やフレイルのリスク が関係している可能性もあります。
低栄養は、やせている人だけの問題ではありません。 体格だけで判断せず、 体重変化、食事摂取状況、筋肉量、 疾患の影響などを総合的に確認することが重要です。
診療所に求められるのは、 すべての患者に一律の栄養指導を行うことではなく、 変化の背景を医学的に評価し、 必要な介入につなげること です。
通院中断の理由が不明な場合も、 患者本人の意思や個人情報の取り扱いに配慮しつつ、 必要な継続診療が途切れない方法を検討します。
4.診療所だけで抱えず、近隣薬局との連携を深める
継続的な健康管理の重要性が高まる一方、 診療所の医師や看護師だけで、 患者の日常生活をすべて把握することは困難です。
そこで、連携先として考えたいのが、 門前薬局や近隣の保険薬局です。
薬局では、服薬状況だけでなく、 患者との会話から食欲、体重、生活状況などの変化に 気づくことがあります。
こうした情報を必要に応じて医療機関へ伝えることで、 診察時の評価に役立つ場合があります。
診療所と薬局の役割分担の例
| 診療所 | 薬局 |
|---|---|
| 疾患・症状の医学的評価 | 服薬状況や生活上の変化の確認 |
| 診断・治療方針の決定 | 必要に応じた受診勧奨・情報提供 |
| 栄養状態の医学的評価と対応 | 栄養リスクの簡易チェックや継続確認 |
| 必要な専門職への紹介 | 管理栄養士・ケアマネ等との連携 |
例えば、薬局で高齢患者から 「最近あまり食べられなくなった」と相談を受けた場合、 食事量や体重変化などを確認し、 必要に応じて医師への受診勧奨や情報提供につなげます。
薬局が低栄養を診断するのではなく、 早期の気づきを医療機関へつなぎ、 医師が原因を確認して必要な対応を判断する。 こうした連携が重要です。
ポイント: 薬局との連携は、患者の紹介数を増やすための 仕組みではありません。 患者本人が医療機関を選択することを前提に、 必要な診療や支援につなげる取り組みです。 結果として、地域住民からの信頼や 継続的な診療を支えることにもつながります。
5.「病気を診る」だけでなく、 地域の健康を支える診療所へ
高齢化が進む地域では、 疾患の治療に加えて、 日常生活の機能低下を防ぎ、 健康状態の変化に早く気づくことが重要になります。
ただし、診療所が単独で 健康増進事業を運営する必要はありません。
地域には、薬局、管理栄養士、 訪問看護、ケアマネジャー、配食事業者、 自治体、JA、地域の健康づくり団体など、 さまざまな支援資源があります。
診療所が医学的な評価と医療連携の中心となり、 地域の関係者が日常の健康支援を担うことで、 より継続的な取り組みを検討できます。
地域連携で考えられる取り組み
- 薬局: 高齢者の栄養・フレイルチェックと、 必要時の医療機関への情報提供。
- 自治体: 健康増進事業との接続や住民への周知、 関係機関の連携支援。
- JA・地域団体: 健康講座、運動、交流の場の提供。
- 配食・食品事業者: 食事の準備が難しい方への支援や、 必要な食事・食品の選択肢の提供。
この中で低栄養・フレイル予防は、 医療・介護・食事・運動をつなぐ 共通のテーマになり得ます。
地域で健康支援の機会が増えれば、 これまで医療機関を受診していなかった方の 健康課題に気づく可能性もあります。
ただし、こうした活動の目的は、 医学的に不要な受診を増やすことではありません。 必要な方が適切なタイミングで医療や支援に つながれる地域を作ること が基本です。
明日から始める、診療所の経営・運営チェック
これまでの5つの対策を、 すべて一度に進める必要はありません。 まずは自院で確認できることから始めます。
新患・再診・年齢層・診療科別に整理し、 どの部分に変化があるか把握します。
予約、待ち時間、説明、通院手段などについて、 患者や職員の声を確認します。
体重減少、食事量低下、歩行能力の変化など、 外来で確認したい情報を整理します。
どのような情報を、どの方法で共有するか、 本人への説明や同意も含めて確認します。
対象者や実施内容を絞り、 患者への有用性、業務負担、費用、 継続可能性を評価します。
経営改善の評価では、患者数や医業収益だけでなく、 必要な継続診療が行われているか、 地域連携が機能しているか、 職員の業務負担が増えていないかも確認します。
まとめ|患者数の減少対策は、 地域で必要とされる医療を考えること
診療所の外来患者数が減少したときには、 新しい患者を増やすことだけでなく、 既存患者が安心して必要な診療を受け続けられるかを 見直すことが重要です。
特に高齢患者では、 病気の管理と生活機能の維持を 切り離して考えることはできません。
食事量、体重、筋力などの変化を捉え、 必要に応じて薬局や地域の専門職と連携することは、 地域に根ざした診療所の役割を強める 一つの方法になるでしょう。
外来患者の減少という経営課題を、 患者の健康を継続的に支える診療体制を 見直すきっかけにする。
これからの診療所経営を考えるうえで、 大切にしたい視点ではないでしょうか。
診療所と薬局が連携する 健康支援の仕組みづくり
栄養ケアプランニング株式会社では、 高齢者の低栄養・フレイル予防を切り口に、 薬局、医療機関、介護事業者、自治体等との 地域連携を支援しています。
栄養ケア支援システムを活用した スクリーニングや継続的な確認、 必要な専門職への情報共有、 地域の食事支援との連携などについて、 診療所や薬局の体制に応じた方法をご提案します。
診療所が直接システムを利用する方法だけでなく、 近隣薬局が健康チェックを担い、 医師が医学的な評価を行う連携モデルも 検討できます。
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